長崎 旧浦上天主堂

長崎 旧浦上天主堂

1945-58――失われた被爆遺産

著者:高原 至,横手 一彦,ブライアン・バークガフニ(英文訳)

出版社: 岩波書店 (2010/4/9)

(写真集、説明文:和英あり)



1945年8月9日。


長崎、被爆。


爆心地から500メートルほどの距離にあった旧浦上天主堂が崩壊。

すべてがいきなり消失したわけではなく、鍾塔や南側壁など一部はしっかりと残っていた。

被爆から13年後の1958年、天主堂再建を名目に、旧天主堂の残骸は解体撤去された。

これにより、ナガサキには被爆の痕跡をとどめる建物(被爆遺構)は、すべて消滅。


旧浦上天主堂の解体および同地での新天主堂建築の決定については、

保存派だった当時の市長が解体・新築派に転じていたことが大きな要因であったろう。

ここで一つの疑念が発生している。

1955年、市長がアメリカに一時期滞在し帰国後には意見が変わっていたことだ。


とはいえ、この一点だけで市長を断罪するのはむつかしい。

このあと議会では「保存すべし」と全会一致の採択がなされ、市長が天主堂側へ解体せず保存するよう申し入れを行っている。

また、比較的平坦な土地の多い広島と違い、山に囲まれた土地で代替地を手配すること自体、困難だったことは想像できる。

費用についてはさらに困難で、国内での再建費の寄付を募っても到底足りず、地区を統括する司教が渡米して向こうの教会などで募金活動した、ともあった。


様々な事情が絡み合っての決断ではあったろう。

でもなろうことなら一部だけでも残してほしかったし、

せめて再建される新天主堂に組み込んでもらいたかった、とも思う。

部外者の勝手な意見に過ぎないけれども。


現実に既に存在しないものは保存のしようもない。


これからは私たちがいかにしてこの記憶をとどめ続けられるか?

いかに長く子々孫々、伝え続け、平和への貢献をしていけるか?

を、後世に問われることとなろう。


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