アメリカの鏡・日本 完全版 ヘレン・ミアーズ (角川ソフィア文庫)
一生の間に一度は読んでおいてもらいたい。
なろうことなら本書を横において、近代世界史を学び直したい。
ヘレン・ミアーズによる序文の最後の二行を拾ってみよう。
【一つの国がいきなり「友人」から「敵」に変わった理由がわかれば、私たち自身の考えと政策が他国の人々に向けられるとき、それがどのように見えるか、知ることができる。この本の意図は、少なくともその探求を始めることにある。】
もう一か所だけ、引用しておきたい。
P24、第一章
近代に入ってわずかな間に、平和な鎖国主義から軍事大国主義へ急転換した日本の歴史は、四世紀にわたる西洋世界の歴史の縮図なのである。私たちは日本を客観的に研究することによって、私たちが生きる激動の時代の問題と矛盾を明らかにすることができる。」
本書は日本擁護論のようにも見えるが、本質は違うと思う。
日本がどのような事情から戦争に突入し、何をしてきたかを明らかにし、
それらに対して欧米諸国(あるいは列強)が何を考え、何を表明し、何をしてきたか、を明らかにすることにある。
日本は中国を主舞台として列強各国から様々なことを学んだ。
対外的に何をどう表明するか、その後どう行動するか、批判されたらどうかわすか。
日本は極めて優秀な生徒であったようだ。
だが、生徒が生徒以上になっていくのを見てとったとき、
「先生たち」は何をしたか?
また、随所に現れる「二重基準」。
同じ状況下で同じ行為をしても、それが日本兵であるか米兵であるかによって判断がまるで違っていると指摘する。
兵士や司令官ばかりでなく、対外政策や行動(外交)についても、「先生たち」は相手次第で評価・行動を変えていることにも言及している。
マッカーサー元帥は「兵は敵味方を問わず、弱い者や武器を持たないものを守る義務がある」といったらしい。
著者も批判しているが、ならばなぜ、戦闘能力のほぼ消失した日本に原子力爆弾を2発も炸裂させたのか?
また原子力爆弾投下の前に、日本の各都市に投下された大量の焼夷爆弾も、犠牲になったのはほとんど一般市民である。
日本軍・日本人・日本国がしてきたことと、欧米列強がしてきたこと・教えてきたことを、こうした事実を並べ立てて提示し、自国民へ反省を促している。
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